腰椎症の原因別にみる種類を解説。治し方や身近な対策も!
5人中4人もの人が、生涯のある時期に腰痛を経験するといわれています。今この瞬間にも、腰が痛いと悩んでいる方は多くいらっしゃることでしょう。
腰痛にもさまざまな種類があることをご存じでしょうか?腰痛の種類によっては、実は病気が原因だった、心からのSOSサインだったという場合もあります。そこで今回は、腰痛症の概要や種類、治し方などについて、わかりやすく解説します。
腰痛症とは
腰痛とは、病気の名前ではなく、腰部を中心とした痛みた張りといった症状のことをいいます。
一方で腰痛症は、腰痛を引き起こすさまざまな病気の総称です。たとえば、腰痛を引き起こす代表格である「腰椎椎間板ヘルニア」という病気は、腰痛症のひとつです。
腰痛のタイプ
腰痛は、痛みが生じる長さによって3つのタイプに分けられます。
・急性腰痛:発症からの期間が4週間未満。自然と軽快することが多い。
・亜急性期腰痛:発症からの期間が4週間以上3ヶ月未満。
・慢性腰痛:発症からの期間が3ヶ月以上。自然経過は急性腰痛に比べて少ない。
たとえば「ぎっくり腰」は、7~10日ほどで自然に症状が消えていくため急性腰痛に分類され、急性腰痛症と呼ばれます。
原因別にみる腰痛症の種類
『腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)』によると、腰痛の種類は原因別に脊椎由来、神経由来、内臓由来、血液由来、心因性、その他に分類できます。
脊椎由来の腰痛
脊椎とは、いわゆる背骨のことです。腰椎椎間板ヘルニア、腰椎分離すべり症、腰部脊柱管狭窄症などが脊椎由来の腰痛を引き起こします。
【腰椎椎間板ヘルニア】
腰の背骨に加わる衝撃を緩和する椎間板の内容物が、押し出されて突出する病気です。腰や臀部(尻)の痛みや、下肢にしびれや痛みが生じることがあります。
【腰椎分離すべり症】
背骨の本体であり、中に神経が走る椎体同士がずれてしまうことで、椎間板が突出したり、神経根が圧迫されたりします。一般の人では約5%が該当し、スポーツ選手では30~40%の人が該当するとされています。
【腰部脊柱管狭窄症】
腰椎部の神経の通り道(脊柱管)が狭くなることで、中を走る神経が圧迫される病気です。
腰痛のほか、下肢のしびれや痛み、残尿感などの症状があらわれます。
神経由来の腰痛
脊髄腫瘍や馬尾腫瘍などの病気が、神経由来の腰痛を引き起こします。
【脊髄腫瘍】
腫瘍が脊髄(脳から続く神経の束)を圧迫することで症状があらわれる病気です。
【馬尾腫瘍】
脊髄のうち腰のあたり(腰仙部)に発生した硬膜内髄外腫瘍の総称です。
内臓由来の腰痛
腎結石や尿路結石、腎盂腎炎などが内臓由来の腰痛を引き起こします。また女性の場合は、子宮内膜症が腰痛の原因となっていることがあります。
【腎結石・尿路結石】
泌尿器科系の病気の代表で、腎臓に結石が生じた場合を腎結石、尿路に生じた場合は尿路結石といいます。突然激しい痛みが生じたり、血尿が生じたりします。
【腎盂腎炎】
腎臓内の尿のたまる部分である腎盂内に細菌が繁殖したことで、炎症が起こる病気です。女性に多く発生する傾向があり、腰痛のほかにも背中の痛みや発熱などがみられます。
【子宮内膜症】
子宮の内側を覆っている子宮内膜が、本来あるべき場所以外に発生する婦人科系の病気です。20~30代の女性で発症することが多いとされています。
血液由来の腰痛
腹部大動脈瘤や解離性大動脈瘤などが、血液由来の腰痛を引き起こすことがあります。
【腹部大動脈瘤】
腹部を通過する大動脈が部分的に大きくなる病気です。
【解離性大動脈瘤】
大動脈に裂け目ができて血液が入り込み、血管が膨らんだ状態です。
心因性の腰痛
心因性の腰痛を引き起こす病気には、うつ病やヒステリー(解離性障害)などがあります。
【うつ病】
ストレスなどを背景に、脳がうまく働かなくなっている状態です。1日中気分が落ち込むといった精神的症状と、食欲低下といった身体的症状があらわれます。
【ヒステリー/解離性障害】
極度のストレスや心的外傷からの自己防衛として、さまざまな症状があらわれる神経症の一種です。
原因不明の腰痛の方が多い
ここまでさまざまな腰痛の原因をご紹介しましたが、実際には原因が特定できる腰痛はわずか15%程度といわれています。腰痛の原因が特定できない場合は、長時間同じ姿勢でいることや、重いものを頻繁に扱うこと、冷え性などが影響していることがあります。
腰痛症の治し方と身近な対策
腰痛症の治し方と対策について、痛みの軽減と腰痛予防を中心にガイドラインにもとづいてご紹介します。腰痛の原因となっている病気の根本的な治療も必要ですので、医療機関を受診して、自分に合った方法を医師に相談してみましょう。
薬物療法
お薬を用いた治療は、痛みの軽減や機能改善に有用とされています。急性腰痛なら非ステロイド性炎症薬などが用いられ、慢性腰痛にはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬などが用いられます。
そのほかの治療
患部を温めて血行を良くする温熱治療や、腰椎サポートが症状に応じて用いられることがあります。また、神経根症状をともなう場合は神経根ブロックという注射を用いることもあります。
運動を取り入れる
慢性腰痛に対しては、運動が効果的とされています。一方で、普段運動していない人は腰痛発症のリスクが高まる傾向にあります。中でも自宅で始めやすいストレッチは、慢性腰痛の改善だけでなく、腰痛予防としてもおすすめです。
ストレスが少ない生活を心がける
仕事に対する満足度や精神的ストレスなど、心理社会的な原因が腰痛治療を長引かせる要因になると考えられています。心因性の腰痛を引き起こさないためにも、しっかり休養をとったり、気分転換をしたりして、ストレスを溜め込まないことが大切です。
腰痛症にお悩みの方は当院へ
腰痛は多くの人が経験する、身近な痛みのひとつです。しかし痛みの原因となる病気が潜んでいる腰痛症の場合がありますので、軽視せずにぜひ一度、医療機関を受診しましょう。原因が分からない腰痛の場合でも、医療機関を受診すれば、痛みを軽減することが可能です。
当院でも腰痛症の診療を行っています。地域のかかりつけ医として患者さんおひとりおひとりの悩みや症状をお伺いいたしますので、ぜひ横内中央医院へお越しください。